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寄生菌
4月 4, 2008 |

当サイトに掲載されている内容は、医療関係者を対象として弊社の体外診断用医薬品・測定機器に関する情報提供を目的として作成しております。国外の医療関係者および一般の方々への情報提供を目的としたものではありませんのでご留意ください。

 生活環境には多種類の真菌類が存在し、様々なアレルギー症状を起こすことが知られています。アレルギー症状の原因となる真菌は大きく分けて、室内外の環境中に存在する空中真菌と、ヒトの皮膚に常在する寄生菌があります1)(空中真菌については、「空中真菌」をご参照下さい)。寄生菌は、カンジダ、ピティロスポリウム、トリコフィトンなどの真菌が知られています。これらの真菌に対する特異IgE抗体はアトピー性皮膚炎患者で高率に検出され、重症度にともない高値の傾向を示すことから、アトピー性皮膚炎の重症化に関与していると考えられています2)。また、屋内空中、湿性環境、寝具などにもこれらの真菌が認められます3)。これら真菌のほか、アトピー性皮膚炎患者の皮膚に定着する黄色ブドウ球菌も、アトピー性皮膚炎の重症化、発症に関与すると考えられます4)。

 

カンジダ

 消化管、口腔内などの粘膜および皮膚に常在する真菌で、特に成人のアトピー性皮膚炎の重症化に関与するといわれています5)。成人アトピー性皮膚炎では、ピティロスポリウムに次いで高い特異IgE抗体保有率です6)。またカンジダは、腸管内で増殖することにより様々な症状を起こすイーストコネクション(慢性カンジタ過敏症:腸管内が異常に増えて起こす病気)を引き起こすと考えられています7)。糖分、アルコール類などの過剰摂取や抗生剤、ステロイド剤の頻回投与を行うとカンジダは腸管内に増殖し、腸管粘膜の障害、腸管細菌嚢の異常、毒素の産生を生じます。それにより食物アレルギーを起こしやすくなったり、免疫変調を惹起して他のアレルギーや神経系、消化器系などの様々な症状を引き起こすと考えられています。重症例、とくに米や小麦などの穀物アレルギーのある重症例ではカンジダ特異IgE抗体が高値となる傾向があるため、イーストコネクションは穀物アレルギーと関連している可能性が示唆されています7)。また、カンジダは気管支喘息の原因としても知られています。成人気管支喘息では、空中真菌を含めた真菌の中で最も高い特異IgE陽性抗体保有率です8)。カンジダ特異IgE抗体は高齢になっても低下せず、誘発試験陽性例は中高年に多い傾向があります9)。一方、中高年で発症するカンジダを原因とする気管支喘息はIgEの関与しない遅発型の場合もあると報告されています10)。

 

ピティロスポリウム(癜風菌)

 現在は分類法が改正され、マラセチアと呼ばれています。頭部、顔面、背部などの脂漏性部位に寄生する好脂性の真菌で、特に思春期以降の成人でアトピー性皮膚炎の重症化に関与するといわれています11)。成人アトピー性皮膚炎では真菌で最も高い特異IgE陽性率を有します6)。

 

トリコフィトン(白癬菌)

 皮膚真菌症で最も頻度の高い、白癬(水虫、タムシなど)の原因菌です。頭部、顔面、足、手、爪などに寄生します12)。白癬菌はアトピー性皮膚炎の重症化に関与すると考えられ、また室内塵からも検出され気管支喘息の原因にもなると考えられています。とくに内因性の気管支喘息と診断されていた例で白癬菌が原因であったとの報告があります13)。白癬菌は、自身の感染による感作だけでなく、家族や来訪者などによる室内汚染を介する経皮・経気道感作、またペット皮膚や家畜からも感染すると考えられています2)。

 

黄色ブドウ球菌A※・黄色ブドウ球菌B※

 健常人では黄色ブドウ球菌は皮膚に付着してもすぐに排除されますが、アトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能に異常が起きた場合は黄色ブドウ球菌が皮膚に定着します14)。黄色ブドウ球菌の産生する毒素には、エンテロトキシン(A、B、C、D、E,H)、TSST-1などがありますが、このうちエンテロトキシンのAとBがアトピー性皮膚炎患者の皮膚から高率に検出されます15)。これらの毒素は、アトピー性皮膚炎の重症化、また発症にも関与すると考えられます4)。これらの毒素は、カンジダやピティロスポリウムとは異なり小児からも高率に検出され、小児のアトピー性皮膚炎にも関与します15,16)。SEAとSEBの抗原性は異なるため、特異IgE抗体は両者を測定することが望ましいです。

※黄色ブドウ球菌(細菌)の産生する外毒素の名称で、正しくは「黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)」、「黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB(SEB)」と呼ばれます。

  

 

参考文献

  1. 信太隆夫ほか. 真菌アレルギー:アレルギーの臨床 1997;17;1014.
  2. 池澤善郎ほか. アトピー性皮膚炎と真菌・細菌アレルギー:アレルギーの臨床 1995;15;249.
  3. 高鳥浩介. 生活環境中の真菌とその生態:アレルギー 2005;54;531.
  4. I.Nomura et al. Evaluation of the staphylococcal exotoxins and their specific IgE in childfood atopic dermatitis:J Allergy Clin Immunol 1999;104;441.
  5. 足立厚子ほか. アトピー性皮膚炎重症化におけるカンジダの重要性と抗真菌剤内服療法の有効性について:アレルギー 1999;48;719.
  6. 池澤善郎ほか. 成人アトピー性皮膚炎における感作アレルゲンの全国調査:アレルギー・免疫 2005;12;1728.
  7. 池澤善郎ほか. アトピー性皮膚炎と抗真菌剤:アレルギー・免疫 1999;6;748.
  8. 足立満ほか. 成人気管支喘息における感作アレルゲンの全国調査:アレルギー・免疫 2006;13;548.
  9. 長谷川眞紀. 成人気管支喘息と真菌症:アレルギー・免疫 2003;10;14.
  10. 月岡一治ほか. カンジダ喘息の発症機序に関する研究 第5報 他の真菌およびハウスダストによる気管支喘息との比較:アレルギー 1987;36;1047.
  11. 伊藤浩明ほか. アトピー性皮膚炎患者におけるPityrosporum orbiculare特異IgE抗体の検出とその意義:アレルギー 1995;44;481.
  12. 宮治誠. 皮膚真菌症―白癬:臨床検査 1995;39;1039.
  13. G.W.Ward Jr. et al. Trichophyton asthma: sensitization of bronchial and upper airways to dermatophyte antigen:The Lancet 1989;April 22;859.
  14. 荒田次郎. ブドウ球菌の役割:アレルギーの臨床 2000;20;1120.
  15. 安藤仁志ほか. アトピー性皮膚炎患児の皮疹別の黄色ブドウ球菌の生物学的性状についての検討:日本小児アレルギー学会誌 1998;12;307.
  16. 多田譲治ほか. アトピー性皮膚炎と抗生物質:アレルギー・免疫 1999;6;740.

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